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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

旧友に遇う

「じゃあ、行ってきます。」

昼休みでした。マル子が動物管理センターまで狂犬病の鑑札の手続きに出かけます。ついでに事務用品の買い物と振込みをする予定です。

遠出をしたことはないのですが、自慢のローバーに乗りこみ、エンジンをかけると滑るように走り出す・・・とはいかず、トロトロと出発です。

狂犬病の鑑札は待ち時間が長い時が多いので、マル子はその間に近くの郵便局に寄りました。

カバンを開けて、振込み用紙を出しながらカウンターを見やった時です。

(あれ? 何だか見た事があるような顔だわ・・・)

事務をしている局員の一人が、小学校の同級生に似ています。

(もしかしたら・・・、Oさんかしら・・・)

チラリチラリとそちらの方を見ながら、用事を済ませました。気になりながら帰ろうとしたその時、向こうの彼女が立ち上がり、声をかけられました。

「あの、もしかしたら、用水路マル子さんじゃないですか?」

「え! はい、そうですけど、・・・ヘヘ、そうしたらやっぱりOさんですか?」

「うん、お久し振り。まあ、何年たつかしら?」

「はーい、中学校まで一緒だったでしょ、だから・・・」

・・・・・・・・

「というわけで、今日は郵便局で卒業以来初めて、クラスメートに遇ったんですよ!」

帰ってきてからマル子がニコニコしながらそう報告してくれた。

「内心、(あの人かな?)と、思ったんですが、なかなか声を私からかけきらなくてですね。

でも、向こうから話しかけてくれて、しかも私の名前をフルネームで覚えてくれていたんですよ。えっ!下の名前まで覚えてくれてる!ってびっくりして、嬉しかったです。」

マル子は本当に嬉しそうに色々話してくれました。

古い友達に会うのは嬉しいですね。
それも、思いもよらず自分の名前を全部しっかり覚えてくれていたと知ると、さらに嬉しいですよね。

人は、意識して無くても自分が好きだし、
だからそんな自分に関心を持ってくれていた人に会うと、なんだかちょっぴり幸せな気持ちになりますからね。

友情は大切に!!
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イケメンポリスマン

その日は朝から冷たい雨が降り続いていました。

狭い院長室で机に向かい心臓検査の本を読んでいると、猫娘が来て言いました。

「先生、さっきですね、ポリスマンが来て、『駐車場にちょっと車を止めさせもらっていいですか。』って、言ってきたんですよ。」

「へえ、ポリスマンが!?」

「はい、それがイケメンでしたよぉ。『このとおり・・・』と、身分証明書も見せてくれました。私が見てもわかんないんですけどね、でも、かっこ良かったですよお!」

ニコニコして嬉しそうに、猫娘が教えてくれる。

「ほー、イケメンの刑事さんか。どれどれ・・・・」

私は事務室からそーっと駐車場の方を覗いて見る。
外は雨空で薄暗い。
端っこに止まっている車が一台。ワイパーは動いておらず、フロントガラスには幾すじもの雨だれが伝わって落ちているのが見えるだけで、はたして中に人が乗っているかどうかもわからない。

「ふーん、張り込みなのかなあ?・・・」

「どうでしょうね・・・」

いつの時代も刑事ドラマは人気のようですが、まして本当の刑事さんなら(ご苦労様、街の治安を宜しくお願いします)と、応援したくなります。

私の従兄弟に、刑事をしているのが一人いますが、彼は怖そうな面構えで、いかにも刑事という顔をしています。

昔は地方の駐在所に家族ぐるみで赴任しており、どちらかというと気の弱い男でしたが、試験を受けて刑事になったようです。

最近はイケメンの刑事さんも多いのでしょうか?

車は雨に打たれながら、しばらく駐車場に止まっていました。
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一か月の捜索

「大変だ!黒豆(仮名)がいなくなった!」

マダムSの家は、二月八日大騒動になりました。

黒豆ちゃんはもうすぐ1歳になる日本犬の女の子です。元気盛りです。
以前飼っていた犬が病気で亡くなってから、暫らく寂しくしていましたが、その後連れてこられた子犬です。おとなしくて、優しくて、家族中で可愛がっていました。

最近初めての発情が来て、少し落ち着きが無くなったかな?と思っている矢先でした。

「そのうち帰ってくるかも・・・」

そう思って、近所を捜しながら夜まで待っていましたが、とうとう帰ってきませんでした。

「どこに行ったんだろう? まさか車に撥ねられていないかなあ?」

楽しいはずの夕食の時も、みんなの心には黒豆がどこに行ったのだろうという心配が燻ぶりました。

次の日から、時間さえあれば、近隣を捜し歩きます。動物管理センターにも失踪犬届けを出しました。

「今日は、あっちの方面を捜してみよう。」

「今日は、こっちの方面を捜しに行ってくる。」

少しでも見かけたという情報が入れば、すぐに飛んで行って、探し回りました。

しかし、黒豆は見つかりません。

とうとう一か月がたち、三月八日になりました。
リーン、リーン、その日、電話が鳴ります。

「西区のほうで、似た犬がいたそうですよ。」

動物管理センターからの連絡に、すぐ車に飛び乗り、お父さんが出かけました。

ハンドルを握りながらも胸が高鳴り、(どうか黒豆であってくれ)と、祈ります。そろそろ現場です。

「このあたりの事かなあ・・・?」

目撃者の話しによれば、十郎川という小さな川の、少し野方寄りに、似たような犬を見かけたと言うのです。

お父さんは車を止めると、土手から川原を捜しながら早足で歩きます。

あまり奇麗な川でもありません。ゴミもあちこち捨てられています。

「近所のおばさんが、うろうろしている犬を見かけたので、呼んだそうですが、捕まえようとしたら警戒して逃げたそうです。」

聞いた話に、(黒豆だったら逃げるかなあ?うちの犬かなあ?)そう考えながら、なおも川べりを探し回りました。

「あっ!!」

その時です。少し先の川原に、犬がいました。黒豆に似ているように見えます。

「黒豆!!」

お父さんは、走り出します。

「黒豆! おまえ、黒豆だろ!?」

犬を驚かせないように息を整えてゆっくり近づきながら、お父さんは出来るだけ優しい声で、呼びかけます。

「黒豆! おいで、黒豆、お父さんだよ!」

川原でそう呼びかけながらゆっくり近づくと、なんとその犬もおどおどと近づいてくれます。

「やっぱり黒豆だ! こんなところにいたのか! おいで、怖がらなくていいよ、さあおいで!」

慎重に、慎重に呼んで、とうとうお父さんは、黒豆を抱き寄せました。もう逃げないよう、ギギュッと抱きしめました。

黒豆もお父さんの匂いが分かったのでしょう。ぺろりと顔を舐めます。感激の瞬間です。

「良かったねえ、よく無事だったねえ・・・
 一か月もどこに行ってたんだ?帰り道が分からなくなったのか?

本当に心配をかけて・・・」

お父さんは改めてちょっぴり腹が立ちましたが、それも無事に見つける事が出来たので、帳消しです。

お父さんは大喜びで黒豆を抱き上げて車に乗せると、まっすぐ家に連れて帰ります。ハンドルも軽やかに、ニコニコしながら運転します。


・・・・
「ということで、昨日一か月ぶりに黒豆が帰ってきたので、ちょっと健康診断をしてもらえますか?」

と、マダムがその日、黒豆ちゃんを連れて来られたのでした。

私はその話を聞きながら、福音書に出てくる、迷子のヒツジを探し回る羊飼いの話を思い出しました。

一匹の犬でさえ、こんなに心配されているのですから、まして我が子の事であれば、親はどんなに心配するでしょう。

若い皆様は、もししばらくご両親様に連絡をとってなければ、たまには電話をしてあげてくださいね。

おっと、私も、一人暮らしの母親に、電話をしとこうかな・・・・
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ポリシーに反したけど

「どうも色々お世話になりました。ようやく気持ちが少し落ち着きましたので・・・」

ムッシュN御夫妻とお嬢様が、おいでになりました。
もうすぐ桜が咲きそうな、三月のある暖かい日のことです。

「リリーが、まだ部屋のどこかにいるような気がしてね・・」

ムッシュがにっこりして、そう言われます。
自宅でもそうでしょうし、こうして待合室に来られても、きっと毎日点滴を受けた時の光景が目に浮かばれるのでしょう。

リリーちゃん(仮名)はくりくりした瞳を持つ、可愛いキャバリアでした。12歳を過ぎた昨年秋から弱り始め、長い間維持治療を続けていました。

とても優しい性格で、まだ元気な頃はシャンプーに来るたびに、みんなの人気者でした。

「そうですよね、いつもワンちゃんが寝ていた所に、つい視線が行っちゃうんですよね。」

「本当にこんなに賢い子は初めてでしたよ。」と、マダム。

亡くなる数日前からぱたりと食べなくなり、流動食を与えても吐きませんでしたが、まもなくそのまま逝ってしまいました。

御夫妻としばらく立ち話をした後です。

お帰りの時、私はお嬢さんに、半分冗談、半分本当に心配でご夫妻にも聞こえるようにですが、こうお願いしました。

「ご両親様が急にがっくりこないように、気をつけてあげてくださいね。」

するとお嬢さんが、何か思い切ったような表情をして、こう教えてくださいました。

「先生、実は私が、リリーに支えられたんです。というのは、この子がまだ来て間もない頃ですが、私が癌になっていることが分かったんです。

医者から、『あなたは手術しないといけないけど、手術をしても生存率は30%です』と言われました。

でも、私はポリシーとして手術を受けたくなかったんです。

だけど、もし私が手術を受けなければ、リリーを残して私が居なくなってしまうかもしれない。いや、そういうわけにはいかないと、考え直しました。

それで私は手術を受ける決心をしたんです。
それから10年と8ヶ月、私はこの子に支えられてきた様なものなのです。・・・」

初めてお聞きする話しでした。人はみな、それぞれの戦いを戦いながら、自分の人生を生きているのですね。

そしてまた私は、真剣なお顔でお嬢さんがそのように話してくださることを聞きながら、

「世話をしている者のほうが、実は支えられていることがある。人とは、そんな不思議な存在なんだなあ。」

と、改めて思わされたのです。
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畑仕事

「もう、うちのお父ちゃんね、最近は畑仕事にすっかりはまってしまって、困ってるんですよ。」

パグのメロンちゃん(仮名)を迎えに来られた時、マダムIがそう言われる。

「おや、ご主人は腰を痛めておられませんでしたか?」

「いいえ、大丈夫ですよ。仕事をやめたでしょ、それから毎日畑に出るようになって。・・・あの、畑も借りてですね。

だけどね、あの人ったら機械まで買うんですよ。それで娘と、『ちょっとそこまでしてどうするん』て。」

「機械・・・ですか?」

「ええ、あるでしょう、畑で動かすのが。」

「えーと、もしトラクターだったら、何百万もするでしょう?」

「いえ、そんなにはしないものだけど・・・、百数十万はしたんじゃないかなあ?

それでね、お父ちゃんは今年でもう66歳なんです。『お父ちゃん、あと何年使うか考えて買いよると?』って、娘と言ってるんですけどね。」

「なるほど・・・。でも、まだまだ元気できっと長く使われるかもしれませんよ。」

「それでね、カリフラワーとブロッコリーの間のような、ロマネスコを作っているんです。ご存知ですか?ロマネスコって。
シャキシャキして、美味しいんですよ。

九大の先生も『見せてください』って、来られたりしてねえ。

他にも色々、つまみ菜とか少しづつですが・・・。」

ムッシュはきっと働き者なのですね。
仕事を引退されても、体を動かすのがなにより楽しいのでしょう。

暑くても、麦わらをかぶり、汗を流しながら
寒くても、路地にかがんで手入れを怠らずに

ニコニコしながら作物の手入れしているムッシュが、見えるようです。
新しい耕耘機も、さぞ嬉しそうに、動かしているのでしょう。
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火事の夢

「この前先生から火事の話を聞いたからでしょうか、昨日は火事の夢をみたんです。」

お茶の時間に、マル子が話し始めた。

「眠ってたら、『火事だ』の声に目が覚めて、うちの五軒先まで燃えてきたんです。大変!

私は急いでうちの鳥とモルモットとウサギとコッカースパニエル二匹を抱いて避難しながら、妹に言ったんです。

『早く起きんね、火事やが!!』

だけどいつも妹は寝起きは機嫌が悪いんですよ。
その間に、私はまず貯金通帳を取り出して、その次に(想い出を大切にせんといかん)と思って、アルバムを取り出したんです。

そのあたりで目が覚めたんですが、まだ夜中の二時半頃で、心臓がバクバクしてそれから四時半まで眠れなくなって、それからようやく寝ました。

朝になって妹に夢の話をしたら、

「やっぱり金の亡者やね、通帳を取り出したんやろ!」

「でも、アルバムも持って出たとよ。」

「なんで、アルバムなんか持って行くと?」

「そりゃあ、想い出やもん。」

「だいたい、モルモットとウサギと鳥と犬ニ匹と通帳とアルバムはいっぺんに持てんやろう?」

「ヘヘ、夢やからね。」


・・・・という風に、朝の会話がなされたようです。

なお、話の中にお父さんもお母さんも出てこなかったので、マル子の御両親の安否は不明です。
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ビートルズを見せて下さい

寒さが戻ってきた三月のある昼下がりです。外は冷たい雨が降っています。
ビーグルのモコちゃん(仮名)が、窓際のソファーにチョコンと座り、おとなしく点滴を受けています。

そのそばで飼主のマダムSが、傍らにあったミュージックパブのチラシを眺めていました。

「ビートルズか・・・フフ、私が高校生の頃だわ。」

「あら、そうなんですか?」

「はい、高校の寮に入っていたんですけどね。ちょうどその頃ビートルズが来日してね、友達とみんなで『寮のテレビでビートルズを見せてください。』って、座り込みをやったのよ。」

「ああ、あの頃は問題になりましたからね。それでどうなったんですか?」

「へへへ・・・、見せてもらえることになったの。」

マダムはニヤッと笑いました。青春の思い出なのでしょう。

「大人になってからだけど、ビートルズでもなんでもレコードをかけると、その頃飼ってたネコがね、すぐ上がってくるのよ。そしてプレーヤーのターンテーブルに乗りたがるの。」

「ああ、きっと回っているからでしょうかね。」

「そして、針は飛ぶし、傷はつくし・・・いつもあのネコは上がりたかったわ、アハハハハ・・・。」

「そうなんですよね、レコードはすぐ傷がつくんですよね。」

「でも、音が柔らかいのよね、レコードは。今でもこーんなにレコードを持っている友達もいるし。知り合いにビートルズ好きがいるから、行ってみようかしら。」

「でも、そこは口の悪いマスターがいるから、負けないようにしないと駄目ですよ。」

「あらそうなの? そしたら私も、誰か口の悪い友達を連れて行こうかな・・・。」

そんな話をしている間も、モコちゃんはおとなしく座っていました。

外では雨が、少し上がりかけています。
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ニワトリの足

「先生、私ですね、さっき駅前のスーパーに寄ったんですよ。そしたら駐車場に、ニワトリの足が1本落ちてたんですよ。」

シーズーのフーちゃんの耳掃除をしている時、マル子がそんな報告をする。今日はマル子は遅番なので、午後からの出勤になっていた。

「えっ! ニワトリの足なの?あそこのスーパーの駐車場?」

「はい、うちの犬も一緒だったんですけど、犬より先に私が発見したので、犬が咥えたら大変と、そっちに行かないようにしました。」

「ふーん、足だけねえ。ついでにモモ肉とか、ササミは落ちてなかったの?」

「フフフ・・・ありませんでしたね。でも、何故でしょうね。もしかしたら、スーパーでニワトリを捌いているんですかね?」

「うん、精肉は捌いているだろうけどね。でも、びっくりしただろう?」

「はい、だけど不気味ですよね、ニワトリの足だけ落ちてるなんて。」

「うん、可哀想だね、足が・・・」


 こんな話しがあります。

昔、ある所に一羽のニワトリがいました。白い奇麗な羽と、黄色い丈夫な足を持ち、頭には真っ赤な鶏冠をかぶっていました。

ニワトリは仲間にも自分の美しい姿を自慢していましたが、ある時、近くの田圃にふわりとツルが舞い降りてくるのを見ました。

「ああ、なんて優雅な姿だろう。すらりとした体に惚れ惚れするような足をしている。」

ニワトリは飛んで来るツルを毎日眺めているうちに、自分もどうしてもツルのような足が欲しくなりました。

「神様、どうか私にもツルのような見事な足をください。」

でも、神様からは何の返事もありません。

「神様、私はどうしてもあんな奇麗な足がほしいのです。」

しかし、相変わらず神様は黙ったままです。

「神様、私はもう我慢できません。もしあなたが私にツルのような足を下さらないなら、私も明日から夜明けを告げる鳴き声を止めます。」

すると神様はニワトリに言いました。

「ニワトリよ、お前はそんなにツルのような足が欲しいのか?それほどまでに言うなら仕方がない。さあ、自分の足をはずして、ここへ取りに来なさい。」

ニワトリは大喜びで、自分の足をはずすと、子供が慌てて靴を脱ぐ時のように、あっちにポン、こっちにポンと黄色い足を捨てて、神様の所に飛んで行きました。

「わーい、立派な足だ、素敵な足だ!」

ニワトリは新しい長い足に大喜びです。白いからだをいからせ真っ赤な鶏冠を振り立てて得意そうに歩き回りました。

「おい、どうだ、どうだ!」

ところがです。
お昼になってお腹が空いてきた頃、ニワトリはふと困りました。

食事を摂ろうと思ったとき、足が長すぎて口が地面に届かないのです。

一生懸命口を伸ばすのですが、目の前の豆に全然届きません。

「あれあれ、弱ったぞ、食べられない。足が長すぎるんだ。
 ・・・・
 これじゃあ、もっと長い首と、もっと長い嘴(くちばし)がいるぞ。」

困ったニワトリは、神様にお願いしました。

「神様、私には長い首が必要でした。でも、まさか首は取り替えるわけにはいきません。

仕方がないので、もとの足に戻してください。」

「そうかい、じゃあ、もとの足を持ってきてごらん、付け替えてあげるから。」

ニワトリは急いで先ほどの足を捜しに行きました。慌てて脱ぎ散らかしたので、どこへやったかわかりません。

村中捜し回って、竈(かまど)のところでスープにされかかっていた足をやっと1本見つけました。

けれどもう一本の足は、とうとう見つかりませんでした。それで、そのニワトリは、足が一本だけになってしまいました。

仲間のニワトリはそんな彼を見て気の毒に思い、それ以来、夜休む時ニワトリたちは、彼と共に一本足で眠るようになったそうです。

さて、どうしても見つからなかったもう一本の足、

もしかしたらそれが、

今日、駐車場に落ちてたのかもね・・・。
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火事の知らせ

カレンダーをめくります。はやくも三月を迎えました。
三月と思うだけで、もうなんとなくのどかで、街に春が到来したような気分になります。

ところが空は墨のような雲に覆われ、朝からかなりの雨模様です。雷さえ鳴っています。

(うーむ、今日は、患者さんは出て来にくいだろうな。)
そんなことを思いながら、散らかった院長室で獣医書を読んでいた時でした。

「先生、お電話です。黒康さんという方からです。」
猫娘がそう言います。

(えっ? 黒康さん・・・どなたかな? )

「もしもし、お電話、代わりましたが、・・・」

「あっ、あの、黒康です。黒康かえでです、はい、奥さんの友人の、いつもお世話になっています・・・」

「ああ、ああ、かえでさん、」

「はい、あの、実は、今朝、家が焼けまして、今、公民館に避難して来てるんです。あわてて逃げるのが背一杯だったので、私、今も着ているのは寝巻き一枚なんです。

それで、携帯も焼けて、奥さんの電話番号もわからないので、病院にかけさせてもらいました。」

「えっ、それは大変だ! すぐ妻に伝えます。公民館ですね、はい、行かせます。え? 着る物が何もない。化粧道具もない?いいえ、かえでさんはスッピンで十分奇麗ですから。

でも、とにかく急いで行かせます。あの、お母さんもご無事ですか?・・・」

冗談には笑ってくれたので、精神的には大丈夫のようです。
私はすぐに妻に知らせに行きます。

ちょうど韓国ドラマを見ていた妻は、事の急を聞き、いざ親友の一大事とばかり、あわてて立ち上がったのはいいが、何を持って行ったらいいかと、あわあわ言って、うろたえるばかりです。

さて、その時は知らなかったのですが、その頃もまだ鎮火しておらず、中洲川端ではなお消火作業が続いていたらしいのです。

「えーと、かえでの着る物と、それとお母さんのものと・・・」

思いつく荷物をまとめて、妻は急いで中州に向かおうとして、はたと止まる。

「でも、中洲って、どっちかしら?」

「う・・・・あのね、・・・・・」

ようやく、妻を送り出す。


「知り合いが火事に遭ってしまったようなんです。」

「火事は怖いですねえ・・・。」

病院に戻ると、ちょうど腎臓病の治療に来られたネコのムウちゃん(仮名)の飼主マダムHと、火事の話になりました。

「うちもねえ、隣が火事で焼けた事があったんです。だけど、境界に立ち木があって、それで類焼が防がれたんです。」

「へえ、やっぱり、生きている木は、強いんですかねえ。防火作用があるんですねえ。」

火事は人生で積み重ねてきた物を、一瞬にして煙にし、無理やり整理してしまう。そんな話をしている間もムウちゃんは、いつもの如く、静かに点滴を受けてくれました。

さて、夕方です。帰ってくるなり、妻が不満気味です。

「ねえ、聞いてくれる?わたし、路上のパーキングメーターにちゃんとお金を入れて、公民館に行ったの。
そして、友達が用事で出ている間も、お母さんに付き添って、九十を過ぎられてるでしょ、

それでなにやらかにやらして帰ろうとしたら、駐車違反が張られているじゃない。だって私、不足分はお金を入れようと思って、コインも両替していたのに・・・。

火事であたりは車が多かったし、荷物を降ろしたかったし、そうそう、ちょうど市長さんも公民館に来られて、長引いたのに

それで、警察に『どうしてですか?』って聞いたら、『じゃあ、抗弁書を提出してください』ですって。私、絶対、提出するわ。」

・・・
状況は分かりますが、はたして彼女の言い分を、受け入れてくれるかどうか・・・?

火災に遭った友人にとっては勿論、わが家にも波乱の三月の幕開けとなりました。
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