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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

急患受付担当

どんな仕事も苦労がありますね。
先日子犬を連れて来られたムッシュが、検査の合間に話してくださいました。

「私はある大きな急患受け入れ病院の受付で働いているんです。電話で問い合わせがよくありますが、変な電話もあるんですよ。

『もしもし、うちの子が具合が悪くて、吐き戻してぐったりしています。心配なんですが・・・』

『それじゃあ、すぐ連れて来られたらどうでしょう。あの、お子さんの名前と年齢を教えてください。』

『はい、年齢は生後半年、名前はポンタです。』

『は?・・・』

『ポンタです。犬も見てもらえますよね、同じ命だから、見捨てないですよね。ねえ、そうですよね。』

『はあ・・・いや、犬はちょっと・・・』

『だって、おかしいじゃないですか、犬なら死んでもいいんですか!?』

『・・・・・・・』

って、電話が月に数件はあるんですよ。いや、困りますね。今までで一番困惑したのは、金魚を診て下さいでした。」

ムッシュは笑いながらそう言われていました。

まあ、人間の病院に、犬や金魚を連れて来るのは、勘弁して欲しいでしょうね。でも、離島などで獣医がいない地域では、ありうる話かもしれませんが・・・。

とにかく正しいかどうかは別にして、世の中にはいろんな考え方をもって暮らしている人が、いると言う事ですね。
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高校の化学部

「ヘヘヘ、先生、実は今まで話したことがないのですが、私、高校で化学部だったんです。」

お茶の時間でした。

カメ子が突然爆弾告白をします。

「え! カメ子が化学部? それは初耳だねえ・・・」

一同びっくりです。彼女は当院に十年以上勤めているのに、そんな話は聞いたことありませんでした。

「ある日ですね、やっぱり理科教室で実験してたんです。アルコールランプでフラスコに入れた薬品を温めていたんです。

それが先生からいつも、
『蛍光灯の下では、温めたら駄目だぞ!』
と、言われてたのはわかってたんですが、なんとなくうっかりして、その日は蛍光灯の下で、温めてたんです。

しかも、ちょっとの間、部屋を離れていたんです。

そしたら突然ボーンという大きな音がして、びっくりして教室に戻ったら、フラスコが爆発して、天上の蛍光灯が破裂して、その付近が白くもうもうとしてました。

私、蛍光灯が破裂したらそんなになるって、初めて知りました。」

と、カメ子が懐かしそうに笑顔で話す。

すると、隣で聞いていたタマエも負けずに話し始める。

「あの、私もですね、高校の時、実験で
『この薬品は使い終わったらこっちのバケツに、その薬品は使い終わったら向こうのバケツに入れなさい。』
と先生に言われてたんですが、間違えて入れてしまったんです。そしたら黒い煙が、モクモクと上がってきてびっくりしたことがあります。」

すると、カメ子が思い出したようにまた言う。

「そうそう、私も先生に
『薬品は流しに捨てたら駄目だぞ。』
と言われてたのに、ある時、硫酸だったかな?ついうっかり流しに捨てたら、炎が上がってびっくりしたことがありました。」

嬉々として話しながら、カメ子もタマエも笑う。

いや、参ったなあ・・・
彼女達が先生の言いつけを守る精神に乏しいのは、どうやら高校の頃から、持って生まれた天性の素質?らしい。

(むむむ・・・こいつらに病院の仕事させていて、大丈夫かしら??)

黙って聞いていた院長は、その日改めて不安になったのでした。
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タマエの涙

「さあ、今日は年に一度の教会の日だわ。」

五月のある日曜日です。
キリスト教精神で設立されている当院では、院内に神棚も置かないし正月の初参りもしませんが、年に一度だけ、スタッフ達は礼拝への参加が行事になっています。

院長の願いとしては、「命」は死んだら終わりなのか、それとも人にも動物にも神の国があるのかという深遠な問題を、たまには考える機会にしてほしいのですが、スタッフ達の関心事はたいがい(その日は昼ごはんをどこで食べようか?)・・・という問題に取り組んでいる顔つきです。

しかしその日は、ちょっと違いました。
なぜなら、今、問題の福島第一原発からわずか3,9kmの位置に建っていた教会の佐藤彰と言う牧師が来てお話されたからです。

教会の建物は津波に耐えました。しかし、とにかく危険だから故郷から立ち退きなさいと、住民全員無理やり追い出されます。そして避難所へ行きます。

教会員の中には津波で亡くなった方もおられましたが、助かったたくさんの方々は、それぞれ避難所ですごしていたそうです。

けれども雪の降る季節に、当初食べ物もありません。三日間食べられなかった方もいたそうです。着る物も毛布も無く、寒さと空腹で、三日間眠れなかった人もいたそうです。

あまりにも過酷な避難所で、体力が持ちません。人工透析を必要な方や、骨折入院している90歳を越えた方、肺炎の方、そういった方々のいく人かがが避難所で亡くなります。

これは、サバイバルだ! 今はとにかく命を助けなければならない。そう考えた佐藤牧師は、バスをチャーターして高齢の人、重症の人が助かるように移動を図るのですが、それを聞いて教会員の希望者も加わって、全部で60人くらいで旅が始まるというそういう話などもありました。

いえ、今も旅の途中で、埼玉県のキャンプ施設で、共同生活が続いているとのことでした。

詳しくは省略しますが、礼拝が終わってスタッフの顔を見たら、タマエの顔が濡れているんです。

「おい、タマエ、どうした!?顔が濡れてるぞ!」

「いえ、先生。わたし、感動して泣いてしまったんです。」

「そうか、君はそんなに感動したか・・・。良かったな。」

タマエの目は小さな目で、どこにあるのか普段はわかりにくいのですが、その日だけは水の流れている上流辺りに目があるというのが、確認できました。

とにかく意義のある、日曜日でした。
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カリン

病院猫の畏咲です。

院長の家には、ラブラドールが二頭いました。いえ、ちょっと前までは十数頭ほどもいたそうですが、段々に減って二頭になったんですって。

なにしろ、おいらの生まれる前の話しですから詳しいことは知らないんですが・・・。

二頭は同腹の兄弟でどちらもブラック、雄はベッシー、雌はカリンという名前なんですが、ベッシーが心臓が悪くて冬は危ないかなと案じられていたんですが、三月になってカリンのお腹が異常に膨れてきたんです。

「この子が食べないなんて、おかしいなあ。よっぽど具合が悪いんだ。」

みんなで診察台に上げて、エコーをとります。

「脾臓があるあたりに、大きなものが出来てる!」

院長ったら自分の犬だから、ためらいもせずその夜すぐにお腹を切りました。

診療時間も終わり患者さんが帰り、通りも静かになった夜中の十時ごろ、暗くなった病院の中で、手術室だけに灯りが燈っていました。

「むむむ、こ、これは・・・・」

無影灯が照らすところ、おへその下辺りから下腹部までふさぐようにして、野球のボールのように大きくなった脾臓が見えました。

「これは大きいぞ!・・・うまくとれるかなあ?」

だいたい脾臓に大きく腫れ物ができたら、血管肉腫か何かが疑われるんですって。

院長はカリンのお腹を丹念に調べましたが、転移の様子はなかったので、膨れた脾臓を摘出したんです。

そしたら随分楽になったんでしょう。二日したら見違えるほどケロリと元気になり、尻尾をパタパタ振って食欲も以前どおりになりました。

「病理検査でやっぱり血管肉腫だって。二か月くらいしか持たないかもしれない・・。」

抗癌剤は使用せず、そのまま桜の花が咲き、ゴールデンウイークも過ぎ、心の隅では完治も期待したのですが、五月も中旬になると、少しまたお腹が膨らんできました。

「もう、切らないからね。頑張って食べなさいね。」

と言いつつも、院長はたいしてご馳走は用意しなかったんです。

院内では以前から、ベッシーとカリンと院長のうち、だれが最初に倒れるかと言うヒソヒソ話もあったようですが、今回はカリンでした。

日曜日の朝、元気に食べるカリンたちに食事を与え、院長たちはいつものように近所の教会に行き、昼過ぎ、奥さんが帰ると、中庭で二頭仲良く伏せて待っていました。

「ごめんね、待たせたね!」

奥さんを見て、カリンは尻尾を振って立ち上がろうとしたのですが、力が抜けたようになってそのままくずれるように倒れてしまいます。

「あれ、カリン、カリンたら、どうしたの! いや、ちょっと待って! カリンたら、だめよこんな所で。」

奥さんはカリンを抱きかかえ、あわてて家の中にいれようとしましたが、ぐったりとなったラブラドールはとても重たいんです。

「待って、待ってったら、・・・」

奥さんは泣きながらカリンの両脇にバスタオルを差込み、必死で縁側の窓からカリンを引き上げ、リビングに寝かせました。

けれどもそれと同時に、カリンは息を引き取ったようです。

「ああ、カリン、もう逝っちゃうの、私が帰ってくるのを待ってくれてたの?カリン、ごめんね、もう少し早く帰ってきてあげたら良かったね、カリン、待ってくれてたんだね・・・」

奥さんはカリンの体をさすりながら、「ありがとう、ありがとう」って言いました。

院長の方は、遊び歩いて夕方遅くに帰ってきたようですが、予想されていたとは言え、朝まで普通に食べていたために、さすがに不意を衝かれた様な顔をしていましたよ。

盲導犬の種犬候補として育てられ、事実生まれてから一度も咬み付いた事も、うなったこともなく、いつも尾を振って答える優しい穏やかな犬でした。

明日がカリンたちの14歳の誕生日を迎えるはずだった、その前日のことでした。
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カチカチ

「うーむ、また来てるぞ!」

外環状線近くの一軒家です。その家の主(あるじ)が、玄関先で空を見上げて睨んでいます。いや、空を見上げてと言うより、電柱の上を見上げてと言う方が正確でした。

家の横にすっくと立っている電柱が1本。高さ十mほどのそのてっぺん近くに、一羽の鳥がいるのです。

「カラスめ、この前、追い出したばかりなのに・・・」

主は、口をへの字に曲げてブツブツ言いました。

カラスと言っても、真っ黒のカラスではありません。黒と白の模様のカチガラスです。カササギとも呼ばれるようです。
資料によれば、日本では佐賀平野近辺にしか生息しない国の天然記念物だそうです。

でも、その家の主にとっては、カチガラスなどとしゃれた名前で呼ぶ気がしないのでしょう。カラス野郎・・・で十分なのです。

というのは、カチガラスは以前もその電柱の上に巣を作ったのですが、その材料に針金やハンガー等を使うのです。そしてそれらがしばしば落下して、真下に止めている主の車を直撃するのでした。

「これはたまらんぞ。」

朝起きたら、車の周辺に落ちている金属を拾い、車の傷をチェックします。

「こりゃあ・・・撤去してもらわんとなあ・・・」

愛車を見、電柱の上を見上げ、ついに主は決心しました。
どこに電話したかは知りませんが、高所作業車が出てきてすべて取り除き、カチガラスのマイホームは、潰え去りました。

「カチカチ、カチカチ・・・」

負けたカチガラスが、勝ち勝ちと鳴いています。

「ごめんよ、カラス君、悪気はないんだけどなあ。」

夕暮れ時、主はカチガラスに謝りながら、お家に入りました。

ところがです。
ところがカチガラスは、ほどなくまた同じ場所に巣作りを再開したのです。
飛んで行っては1本、飛んで帰っては1本、巣材を咥えて来ては運び込みます。

「やや! また作り出したのかよ!」

家の主は空を見上げて渋い顔をしましたが、しばらくして針金が車に落ちてくるようになると、我慢できなくてまた電話を入れました。

「カラス君、街中で作るからだよ、どこか他所へ行けよ。」

再びすっきりした電柱を見上げながら、主は言いました。カチガラスはまたもや無くなってしまった巣を悼むように、「カチカチ、カチカチ」と鳴きました。

さて、それからしばらくしてからでした。なんだか屋根の上が騒がしいなあと思った家の主が出てみると、なんとカチガラスが三度(みたび)巣作りを始めていたのでした。

「あちゃー、また作るのかい?・・・・・」

家の主は電柱を見上げながら、ため息をつきました。
しかし、そんな下界の思惑をよそに、カチガラスは空の上の論理で悠然と構え、どこかへ飛び立っては、また巣材を咥えて帰ってきます。

「カチカチ、カチカチ・・・・」

うむ、カチガラス、三回の表の攻撃に入ったようです。あくまでも、勝ち越しを狙っているようです。
さあ、家の主は投球を変えるのでしょうか?

カチガラスの学名は、ピカピカジャポニカと言うんだそうですけど、

これぞ日本の栄光!・・・みたいな頑張りやの名前ですね。
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長靴は履かないけど賢い猫

こんにちわ!
病院猫の畏咲です。

ようやく最近、おいらの名前も知られるようになったんでしょうか。患者さんの中で病院に来たついでに、
「畏咲の顔を見て帰ろう」
と言われる方が、ぽつぽつおられますよ。

いえ、別に見せるほどの顔じゃありませんが、院長のしけた面を見た後の皆さんなら、帰り際においらの顔でも見れば少しホッとする一面があるかもしれませんね。

ところで先日、ある御夫妻が来て、こんな話をしてくれたんです。

「おい、畏咲、うちの猫のビーちゃんはな、賢いんだぞ!
 ビーちゃんは押入れが好きなんだけど、勝手に開けて入るから、押入れロックをつけたんだ。

そしたらね、あいつ、押入れを開ける前に、ロックをじっと見るんだ。そしてロックがかかってなかったら、押入れを開けるんだ。だけど、ロックがかかってたら、押入れを開けようとしないんだぞ。すごいだろ!

それからな、普通の押し下げるだけのドアノブは背伸びして簡単に開けるんだけど、昔の丸いドアノブも両手で挟んでくるくる回して開けようとするんだ。
すごいだろ!

だけど、驚くのはまだ早いぞ、びーちゃんはな、新しい子猫が来た時、面倒をよくみてやってたんだぞ。
ダンボールに蓋があるだろ。子猫が飛び出さないように、僕が蓋を立てて、蓋と蓋をガムテープで止めて壁を高くしたんだ。

ビーちゃんは大きいから簡単に飛び越えるけど、子猫は飛べなくて鳴いていたんだ。
そしたらな、ビーの奴、じっとガムテープ見てて、それからガムテープを咬んで引っ張って、はずしはじめたんだ。

あっちもこっちもガムテープがはずれて、蓋がパタンと倒れたら、そしたら子猫が飛び出してきて、ビーちゃんが遊んでやってたんだ。どうだ、賢いだろ!すごいだろ!」

なんてね、飼い猫の自慢話なんですよ。

むむむ・・・
そりゃ、話のとおりなら、賢い猫だと思いますよ。
でもね、どこまで本当で、どこからホラなのか・・・

昔の本にもありましたねえ
トマスとかいう人でしたっけ

「俺は、復活したという、その主のわき腹に、わき腹の槍の穴に手を差し込んで見ない限り、復活は信じないぞ!」

ふーむ、見ないで信じれたらいいんだけど、

ビーちゃん、今度採血の時、腕をまくって差し出してくれる?
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日向峠から戻った

「先生、うちの近くにいた老犬が、最近亡くなったんですよ。」

マル子が床にモップをゴシゴシかけながら、そんな話をする。

「へえ、何歳ぐらいだった?」

「さあ、詳しくは知らないんですが、散歩中に倒れて、そのままだったみたいです。前から咳はしてたから、弱ってたんだろうと思いますが。

むこうの方が

『食欲が落ちたから、色々食べるものを捜してやってるんです。』

と言われたので、病院に連れて行ったほうがいいとは、お伝えしたんですが。

でもですね、その犬はもう十何年か前になりますが、昔何かの理由で、一回捨てられたそうなんです。

日向峠あたりまで連れて行ったそうです。(日向峠は10kmほど離れた所で、隣の前原市との境界をなすちょっとした山です)

だけど、すぐ戻ってきたそうです。その時足に怪我をして帰ってきたそうです。

『あんな峠から帰ってきたなら、こりゃあ、飼っちゃらんといけんなあ。』

すぐ傷の治療をしてもらって、それからはずっと家に置いてもらったみたいですが。」

「ふーん、そうか、・・・昔はよく、捨て犬があったからね。」

勿論捨て犬はいけない事だが、考えてみれば、山に捨てられても帰ってくる犬というのは、いじらしい話だ。

人のように、「チクショウ! 俺を見捨てるのか、それならいつか偉くなって見返してやるぞ!」

という、そんな気概も負けん気も無いかわりに、

犬は飼主の善意を信じて、信じて、信じて、地図も無く、北も南も分からず、誰にも聞いたり教えてもらったりできない犬が、一生懸命元の家を探して帰ってくるのです。

どうやって峠を越えて、知らない道をすぐ戻ってくる事が出来たのでしょう。本当に不思議です。

しかしその犬の足を引きずりながらも帰って来たいじらしさが、理屈ではなく、一度捨てた家人の心に何か響いたのではないでしょうか。

とにかくそれから十数年間、彼はその家の一員となりました。そして朝に夜に庭を見張り、家族を守り、ついに飼犬の生涯を全うしたのです。

散歩に連れ出してもらい、いつものコースをいつものように歩きながら倒れた事も、もしかしたら、必ずしも不幸とは言えないのかもしれません。

人だって、病気に対して十分な手当てをし、最新鋭の総合病院で最期を迎えるのが幸せとは限らないように。

病気であるのがわかっていても、いつものように出勤して、体の動く限り自分の仕事に取り組みたい。そう考えている人はいます。

坂本龍馬ではありませんが、人生安全第一を必ずしも人は選ばないようです。

そう決めて、うちに潜む病を知りながら今日も仕事着を着、靴を履き、「行って来るよ!」と出かける人は、きっとたくさん居られるのでしょう・・・。
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野菜室

連休合間の月曜日、可愛いチワワが来ました。でもうつむいて元気がありません。2,3日具合が悪いそうです。

「なんだかお腹が張って、出血もあって様子がおかしいのですが・・・」

「ふーむ、かなり大きなお腹ですね。エコーで見ると膀胱の両側に何かが貯まったような構造物がありますから、おそらく子宮感染でしょう。」

体重わずか5kgの体の腹部がパンパンに張り出して、いかにも苦しそうです。

これは今日中に緊急手術をしたほうが、良さそうです。

夜九時になり診療が終わるとすぐ手術にとりかかりました。麻酔をかけ手術台に寝せます。いつもどおり術野を消毒し、血圧を下げないよう気をつけながらメスを入れ開腹すると、白い大きな風船状の組織が見えました。やはり膨らんでいるのは子宮のようです。

「さあ、とり出すぞ。・・・・むむ、出てこないなあ。これは巨大だ。巨大すぎる。もう少し大きく切開だ。・・・むむむ、まだだめか。

あんまり子宮を引っ張ると、破裂しそうだ。もう少し切開線を広げよう・・・う、やっと出てきたぞ・・・」

まるで水風船を三つも四つも繋げたように大きな子宮がやっと表に出てきました。私たちは破裂や出血に気をつけながら少しづつシールし切除します。

「すごい、先生、593gもあります。」

切除した子宮卵巣を測定したカメ子が大きな声で報告する。体重の12%にも匹敵する重さです。

「休み明けに飼い主さんに見てもらうまで、子宮は保存しないといけないね。」

「じゃあ、冷蔵庫に入れておきます。」

こうしてチワワの手術は成功し、日に日に元気になった。

それから四日間、膿みの充満した蓄膿子宮は冷蔵庫の野菜室を占領していた。それで、スタッフ達のいつも入れているお茶やお菓子は、カメ子が上の棚にすっかり引越しさせたようだ。

ところが今日、いつものようにお茶の時間を終わるとタマエがまたお菓子を野菜室に戻そうとしている。

「ああ、だめよ! そこは今日は子宮が入ってるから、そこには入れないで。」

大抵のものなら何でも口にするマル子だが、今日はあわてて止めに入った。

「はい、あ、上ですね。」

その後に残ったゼリーをまとめると、タマエはそれも野菜室にもどす。

目を光らせていたマル子がまた慌てて止める。

「あの、だからそこに入れちゃあ、駄目ってば!」

「あ、はい、これも上ですか?」

どうやらタマエは冷蔵庫の子宮には動じてないようです。

傍からそれを見ていたカメ子が、ニヤニヤしながら話してくれた。

「先生、マル子はだいぶ真剣ですよ。普段仕事中にみないほどの真剣さで、タマエにお菓子のなおし場所を指導していますよ。

今日のマル子は、かなり本気ですね、私の感じでは。」

かくして、連休明けの仕事は始まったのです。
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