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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

二度あることは

「二度あることは三度ある。」とは、聞き古した言葉です。

これまで私はこの言葉の意味を、「長い間生きていると、人生にはしばしば同じような出来事に遭遇する機会があるのだ。」と、理解していた。

しかし最近この歳になって、古人の言わんとしている事は少し違うのではないかと、考えている。

つまり、「もし最近、二度ほど似たような事例を経験することがあったら、さらに近いうちに三度目も起こるかもしれないよ!」

そう、助言したいのではないか!?

そんな気がしてならないのです。

動物病院では、捨てられた子猫が持ち込まれる季節になると、それが重なります。
繁殖シーズンなら、当たり前の話です。

しかし、最近めったになくなった交通事故で骨盤骨折した猫が、なぜか続けて来たり、

感染症でないのに、似た病状の子が来たりする。

そればかりか、車を運転していても、飛び出しがある日は、なぜか飛び出しが多い気がする。

それで勝手な私の解釈ですが、二度あったことは三度目に不意打ちされないように、用心するよう癖がついた。

ただし逆を言えば、「一度もないことは、すなわち将来も起こりえない。」と、言えるかもしれない。たとえば

これまで美女に詰め寄られた経験のない人は、
つまり、将来もそういう望みはないだろう。

うーむ、
古人は、本当はそう言っているのだろうかしら・・・・。
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雲仙に行った日

「先生、うちのタマ子がお世話になりました。これね、お土産!」

いつも陽気なマダムKが、子猫のタマ子を迎えに来られました。春分の日からの連休で、旅行に行かれたようです。

「わ! マダム、ありがとうございます! タマ子ちゃんは元気でしたよ。」

「フフフ・・・そう、良かったわ!」

・・・・・・・・・・・

さて、お茶の時間です。

「ところで、マダムKは、どちらに旅行に行かれたのかな?何のお土産いただいたの?」

「はい、えーと、雲仙て書いてますよ。『雲仙豆煎餅』って。」

「へーえ、雲仙か・・・。いいなあ、あそこは静かで、とにかくのんびりできるところだからね。

で、君達は、雲仙行ったことあるの?」

「何度もあります。」

カメ子がそっけなく即答した。

「あの、わたしは、小学校の修学旅行で行きました。」

マル子が話し始める。

「わたし、あの時、雲仙で温泉卵を買いたかったんですよ。でも先生が『ここでは買い物をしてはいかん。』と、言われて、何も買えなかったんです。」

「へーえ、買っちゃいけないの。カメ子の学校は、生徒が悪かったからね。」

「いえ、いえ、小学校のときは大丈夫でした。悪いの中学校でした。

・・・それでお土産は、長崎でカステラを買って帰ったんですが、お店に積まれているのをとってきたら、家に帰ってから、

『あら、賞味期限が短かいね。あんた、上からとったんやろ。下からとらんとだめやないね。』って、親から言われました。

それから、妹にはチャンポンのお土産を買ったんですよ。チャンポンってわかりますか? ガラスでできていて、吹くとペコンポコンっと、音がなるやつですけど。」

「うんうん、わかる。薄いガラス細工のね。」

「はい、割と大き目のチャンポンを買ってきたんですが、妹に『はい、お土産!』って、渡したんです。

そしたら、妹がプーっと一回吹いて、パチンと割れて、それで終わりでした。すぐ壊れました。」

「ハハハ・・・、小学生だからね。適度というか、常識がわからないからね、ハハハ・・・しかたないね。ハハハ・・・」

雲仙・・・その地名一つにも、響きがある。

「雲仙」と聞いた人は、各人それぞれの想い出が、甦るのだ。

一瞬にしてマル子には、二十数年前の想い出が、まぶたに浮かんだ。

そっけなく答えたカメ子には、そっけなく答えてしまう理由となるような想い出が、もしかしたらあるのかもしれない。

いや、もちろん私にも、雲仙には数々の想い出がある。

良い想い出は、パチンと割れないから、いい。
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難産で

「大変なんです! 赤ちゃんが、出なくて・・・」

西の空がオレンジ色に輝き出す、秋の夕暮れでした。マダムYが蒼い顔をして、慌ただしく入って来られます。抱えたバッグには猫のチャゥちゃんを連れています。

「マダム、どうしましたか?」

「先生、ほれ、このとおりです。私、仕事に行ってて、さっき帰ったら、こんな状態でした。」

ちょっと元気のないチャゥちゃんが、診察台に上がりました。伏せてうずくまるチャゥちゃんのお尻を見てドッキリ。尻尾の下に、小さな新生児の首が出ています。

「あれ! ・・・うーむ、これは難産に陥ったんですね。」

「もう生まれる。帰ってきたら、生まれているかもしれないと思いつつ出勤したのですが、まさか、こんなことになっているとは。」

首だけ突き出た子猫はすでに干からび、血の気も失せて、もう死んでいると判断された。しかし、お腹はまだだいぶ大きい。きっと他の赤ちゃんが、中に閉じ込められているはずだ。

さっそく帝王切開の準備です。

「もう、お腹を切らないと出て来れないと思います。手術をして、よろしいですか?」

「はい・・・お願いします。」

というわけで緊急手術に入ったのです。

「早く術野の消毒済ませて!急げ! 」「止血用バイポーラを出して!」「熱いお湯でマッサージして!」「呼吸促進剤打って!」

子宮にメスを入れ、羊水に包まれた子猫を取り出して、生存を確認します。

「こっちは死んでるね。・・・この子は、顔が潰れてる。・・・うん?この子は、まだ生きているぞ!」

かすかな心拍動があるのを見て、大急ぎで処置しつつ、出て来た一匹、一匹をスタッフに委ね、手術を進めます。

結局お腹の子猫のうち、二匹はすでに死んでいました。産道の途中で圧迫を受けたようです。強いいきみのために、体が圧迫変形していました。

他の三匹はまだ心臓が動いていましたが、そのうち二匹は自力呼吸をしてくれず、残念ながら助けられたのはわずかに一匹でした。

その一匹は盛んに動き回り、生まれてすぐ、腹が空いたのでしょう。おっぱいを求めて、鳴き声も大きくなってきました。

「・・・・・」

「・・・・・」

「一匹だけでも助かってよかった・・・」

「いや、せめてもう一匹は助けたかった・・・」

それが私の、正直な心の思いでもありました。

「いえ、あの状態を知っていますから、もう覚悟はしていました。」

以前より、捨て猫などの面倒を見ておられるマダム夫妻は、迎えに来られた時穏やかにそう言われると、箱に入った、80〜90gの小さな四つの体を覗きながら、二人で相談を始めた。

「どうしようか!? あんたとこの、山に、持って行って埋める?」

「・・・、そうね、埋めようか?」

生まれてくることができなかった子猫達は、どうやら埋葬してもらえるようです。
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豊島の遠泳

「こんにちわ、ワクチンをお願いします。」

トミー君を連れて、ムッシュSがお出でになりました。トミー君は来月の誕生日を迎えたら十歳です。

「トミー君は今日は元気ですか?・・・ムッシュ、今日は姪浜から能古島(のこのしま)まで泳いだ中学生の豪傑が来てますよ!」

ちょうどその日は、市内の中学校から職場体験学習のために中学生の女の子が一人、診察室で見学していたのです。

女の子の話では、姪浜の港から博多湾に浮かぶ能古島までおよそ1.5kmだそうです。

その距離は予想よりも近いと思いましたが、風があり、波があり、くたびれてもプールの底があるわけではない海の上を、遠くに見える島まで泳ぎに挑戦するのはちょっと勇気が入ります。

「ほう、君は能古島まで泳いだんだね。・・・」

ムッシュは女の子ににっこり話しかけながら、さらに言葉をつないだ。

「ぼくたちの頃はね、一万mの遠泳があったよ。

うん、豊島(てしま)っていう小さな島だったけどね、その頃いたのは。・・・そう、瀬戸内海の小豆島の近くにある小さな小さな島ですよ。

一時、公害物質搬入で騒動もあった島だけどね。

近くの島の周りを泳いで一周して、十kmね。島育ちだから僕は、舟の櫓をこぐのも、櫂を操るのも、出来るんですよ!

あの頃、修学旅行生を乗せた船が、霧の時に貨車を積んだ船と衝突して、子供が三百人亡くなるという事故もあったなあ・・・。

ぼくたちは舟で学校へも行ってたけど、霧が深いときは船首で長い釣竿を前方で振りながらゆっくりゆっくり進んでいたよ、いえ、本当に。

寒い時は黒く実ったオリーブの油を皮膚に塗ると寒くないと言っては、塗ってたし。戦後間もない時期だったからね。

風がないときは、海上が鏡のように静かで、まるで歩いて渡れそうな水面だったなあ・・・。」

ムッシュの話を聞いているうちに、わたし達の思いは博多湾の風景から、いつの間にか昭和三十年代、瀬戸内海の風がそよぐ島影へと、飛んでいたのです。

人にはそれぞれの人生がありますね。

人のたどった道は、その人が語り出すまでわかりませんが、このようにしてふとした機会に聞くたびに、その方の人生の深さに触れさせてもらえるのは、嬉しい事です。
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子猫君、彼の海へ

・・・その日、思いがけないことがあった。


「子猫はいますか?」

自動ドアが開いて、小学生ぐらいの男の子が入って来る。

「うん、いるよ。」

スタッフが答える。また、通りかかりの子供が、子猫と遊ぶために寄ったのだろうと思う。

ところが、その日は違った。

続いて自動ドアが開き、若いお父さんとお母さんも入って来た。

三人で、里親探しの子猫の入ったケージの前に、しゃがみこんだ。

「この子なの?」

お父さんが子供に聞きながら、親子で待合室に出してある黒いケージを覗きこむ。

「はい、その子です。」

カウンターから、男の子の代わりにスタッフが答える。

「でも、もう一匹いますよ。そっちはキジ猫で、ちょっと大きめです。」

お父さんはお母さんに何か聞きながら、お母さんは男の子に何か聞きながら、そして子供は誰にも聞かず、生後二か月の白黒の子猫を見つめていました。

男の子は、ひと目でその子が気に入ったようです。

「もう一匹のほうも、見せてもらえますか?」

お母さんが、言われる。一応、見比べておきたいと言う気持ちは当然です。

「どうぞ、こちらです。」

カメ子が、猫舎に案内する。

ドシン、バタン・・・

中には、元気盛りの雄のキジ猫が一匹いる。

「あ、ちょっと、大きいわね。」

「うん、こっちはちょっと、大きいかな・・・」

夏前からケージに出ているけど、もらわれないので、体つきは大きくなってしまった。

「やっぱり、向こうの白黒がいいだろ。」

親子三人で意見が一致し、晴れて黒白の子猫の行き先が、決る。

待合室の端にあった黒いケージのドアがギギッっと開き、その小さな体が抱き上げられると、もう、今日から彼の世界は、変わるのです。

新しい海に、黒白の小さな命の、船出です。
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マル子の初体験

掃除の時間です。マル子が、モップを動かしながら、話してくれました

「この前の休みですね、市からの健康診断の案内を初めて受け取ったので、私、行ってみることにしたんですよ。だって、5百円でできるらしいので。

私がよく行く病院は、ベテラン看護士がそろった所だから、採血なども失敗がなく、痛くもなく、上手なんです。時々あるでしょう、イテテテ・・・・と思うときが。

それで血圧測ると、上が94、下が56だったんです。

『あなた、血圧低いわね。いつも低いの?』

って、看護士さんが聞いたから、

『わかりません。血圧測るの初めてなので。多分、検査の為、生まれて初めて朝食を抜いたからかもしれません。』

って、答えました。」

「えっ! マル子、君、朝ごはん食べなかったこと、ないの?小学校とか中学校とかで、具合が悪いとか、遅刻しそうだとか、そんな理由で、一回ぐらい朝ごはん食べなかった経験、生まれて今まで一度もないの?」

「いえ、ありません。毎日食べてます。フフ・・・」

「驚いたなあ・・・。たいしたもんだね。」

「それでですね、『胴回りも測ります』って、言われたんです。」

「胴回り? ウエストのことじゃないの?」

「いえ、それが違うんです。ウエストじゃなく、お腹が一番膨れている部分を、測るんです。『ここじゃ、なんだから、あっちの隅に行って測りましょ。』って言われて、広い部屋の隅に連れて行かれて測ったんですが。」

「どこで測っても、一緒なのにね。」

「はい、それから、私、パスタを連れて、ディスカウントショップに行ったんです。(注:パスタとは、猛烈凶暴な咬みつき犬です)

そこの駐車場に、証明書写真の機械があるんですが、ふと気がつくと、撮影する椅子の横に財布が落ちてたんです。

私、あれ!?と思って、キョロキョロしたんですが、周辺には誰もいないので、拾って、どうしようか、お店に届けるのがいいか、警察が良いか、迷ってたんです。中には、キャッシュカードも、免許証もあったんです。落とした人は困ってるだろうと思って。」

「うん、うん」

「そうしたら、真っ青な顔をした女性が走ってきたんですが、その方の顔は、免許証の写真と同じ顔だったので、すぐわかり、お渡ししました。」

「ふーん、それは良かったね。さぞ、喜んだだろうね。それで、お礼は、もらえた?」

私は、ゲスな質問をする自分自身に、(おまえ、そんなつまらない事、聞くなよ)と、心で逡巡したが、結局聞かずにはおれなかった。

「はい、『助かりました!』って、すごく喜んで、嬉しそうでしたよ。・・・ え? いいえ、お礼なんて、もらっていませんよ。」

「そうか、良かったねえ、すぐ、見つかって。そりゃあ、嬉しかったろうねえ・・・。」


以上が秋の初め、マル子の休日。変化に富む出来事と、ドキドキした事件でした。
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ゲット・アウト!(続き)

不審な男、偽ブルース・ウィリスは、ぶつぶつわけのわからない言葉をつぶやきながら、ビールをぐいともう一口飲んだ。

(まさかこの男、危ない薬をやってるんじゃないだろうな?)

男から1.5m離れた所に私は立ち、そんなことも考えながら観察する。今はいろんなことが起こる時代ですから、様々な可能性を考えて、対処しなければなりません。

(おい、畏咲どう思う?この男、暴れるかな?)

(うん、十分、慎重にしたほうがいいぜ・・・)

私はとりあえず、近くの交番に電話するよう、マル子に伝えた。一応、不法侵入に当たる可能性があると判断した。緊張して見守っていたマル子は、すぐに電話をかける。

ところが、それからのマル子の電話は、えらく長い会話が始まった。交番では詳しく状況を聞いて、行く必要があるかどうか、判断しようと思っているのかもしれないが、早い話が、暴れてないんなら、出動はしないということで、必要な時は、交番ではなく、110番してくださいという。

なんと、電話がそういう結論に至るのに、十分近くかかった。

(そうか、お巡りさんは、来てくれないか・・・)

私の従兄弟(いとこ)に、暴力団担当の刑事が一人いる。そいつがまた、暴力団以上に危なそうな面構えをしているのだが、ふと、彼の顔を思い出した。

まあ、いい。

警察も忙しいのだ。いちいち出動していたら、人数が足りないのだろう。ここは、私が体を張るしかない。

覚悟を決めて、私はスキンヘッドの男のそばに立つ。黙って立つ。

黙って立っていると、男が話し出した。酔っぱらいの英語だから、良くわからないが、どうやら何年か前、ここに交通事故の瀕死の猫を連れて来たらしい。一晩で亡くなったのだが、それを思い出して、寂しくて、来たらしい。

(え? そんなこと、あったかな?こんな男性が来たかな?)

私はすぐには思い出せなかったが、よくよく考えれば、そういえば昔、一人の女性が事故で死にそうな猫をつれて来て、入院させたことがあった。そしてその時面会に、一度だけ西洋系の男性が来たことがあったことを思い出した。

(ははあ、その時の話なのか・・・)

「だけどね、文句を言いに来たんではない。そうじゃなくて、思い出して、つい、入って来たんだ。」

彼は、私にそうつけ加えた。

話しながら、泣いている。泣き上戸かもしれない。
病院に迷惑をかけている事実は、感心しないが、今ごろそんな昔のことで酔っ払って入ってくるなんておかしい。

きっと、何かあって今夜は寂しいんだろう。私はそう思った。
もしかしたらその時の彼女と別れて寂しくなり、それが思い出されて入って来たのかもしれない。

いや、失礼、それは私の勝手な想像だが。
しかし人間は寂しくなると、だれかに絡みたくなるものだ。きっと、何か寂しいのだろう。私は好意的に、理解した。

まもなく彼は、「すまなかった。迷惑をかけた。」というようなことを言って、帰って行った。

夜道を消えていく彼の後姿は、異国に生きる者の寂しさを漂わせているようにも思えた。
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