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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

あなたねえ、覚悟して・・・

「あら、可愛い! ねえねえ、子猫ちゃんがいるよ! おチビちゃん、ママはどうしたの?」

「ミャーァ・・・・・」

「困ったわね、一人ぼっち? お腹空いてるのかな?」

それは小学校で働いているポンタちゃんのお友達が、帰宅途中のことでした。可愛い子猫が一匹迷っていたのです。小さな体を震わせています。彼女は見て見ぬふりをしたいのですが、やっぱりできませんでした。

「どうしよう、私は明日から、楽しみにしていた旅行に出かけるんだけど・・・。うーん、そうだわ!」

彼女は近くの動物病院に頼むことにしました。

「そういうわけで、先生、三日間だけこの子猫を預かってくれませんか? いえ、三日だけでいいんです。旅行から帰ってきたら、自分で育てますから。」

「それはできませんよ。あなたね、簡単に保護してはいけませんよ。保護するなら、覚悟して保護しなさい。こんな小さい子猫、ちゃんと世話しないと死んでしまいますよ。」

(むむむ、なんで、叱られないといけないんだー、)

ちょっとむかつきましたが、そこは大人、にっこり笑って答えました。

「わかりました。自分で面倒見ます。」

ということで、彼女はなんと楽しみにしていた友人との旅行をキャンセルして、ミルクをやり、子猫を育てたそうです。

(ほれー、見ろ! ふん、ちゃんと、育ったぞー!)

と、いう心境でしたよ、あの時は・・・。

それは、もう何年も前の、思い出だそうです。ポンタちゃん先生と寄ってくださった彼女が、話してくださいました。

えらいなあ、旅行までキャンセルして、捨て猫の面倒を見るなんて。それにしても、世の中には厳しい獣医さんもおられるんですね。

私もできれば結婚の前に、そういう話を、聞いとけばよかったなあ・・・。

「あなたねえ、簡単に結婚してはいけませんよ、結婚するなら、覚悟して結婚しなさい!」

え? 全然関係ない!?


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でも、どうしてわかったの?

「仕事から帰ってきたら、うちの猫が口を開けて、涎も垂らして、様子がおかしいんです!」

そう言って連れて来られた黒猫君も、格闘しながら麻酔をかけて、おとなしくなったところで口を観察すると、根っこがすっかり壊死してグラグラになった牙が上あごからポロリと抜けました。

さてはこれが原因か!? あとは様子を観察して戴くことで無事帰り、ようやく一日の仕事を終えて片づいた時は、夜も十時半になっていました。

「先生、昨日どなたかから、頂き物があったんですか?」

着替えを終えて帰ろうとしていた矢先、病院の廊下で突然カメ子が質問します。

(うっ、カメ子、どうして知っているんだ?)

確かに昨日は、アメリカンショートヘアの雌猫を二匹避妊手術した飼い主さんが、ケーキを差し入れしてくれました。でも、カメ子は休日で来ていなかったんです。

「・・う、うん、まあね、・・・モンブランのロールケーキをいただいたんだよ。それで、マル子と研修生とぺ子と僕と、四人で分けて食べたんだよ。」

「それで、残りはどこにあるんですか?」

「う・・、い、いやね、なにしろ生ケーキでさ、賞味期限が昨日一日だったから、残したら悪くなると思って、みんな食べちゃった。い、いやね、僕は言ったんだよ、カメ子に残さなくて良いのかいって、聞いたんだよ。

そしたらマル子がね、『カメ子さんは、賞味期限が切れた物は好きじゃないから、残さなくてもいいでしょ』って言ったんだよ。だからさ、みんな食べちゃった。

いやね、僕は、残したほうが良いよって、言ったんだけどねえ・・・。」

「いいえ、そのような高級なお菓子の時は、一日くらい気にしませんから、私は食べますから。」

「そ、そう・・、じゃあ、この次から、残すようにしとこう・・・。」

その後は無言で廊下を歩き、二人裏口を出ます。中庭からカメ子は門を出た時、私は後姿の彼女に聞きました。

「でもカメ子、どうして君、昨日いただき物があったってわかったの? 」

「洗い場の水切りかごに、洗ったお皿が干してあったんです。あのお皿を使ったなら、何かみんなで食べたなと思って。」

冷ややかにそう返事して、カメ子は夜の闇に消えて行った。

カメ子、恐るべし!である。

 以前も一度、ゴミ箱の中に捨てたみんなで食べた後のお菓子の包み紙を見つけて、翌日問い詰められたことがあったので、今後ゴミを捨てる時は気をつけようと思ったが、水切りかごまでは思いが及ばなかった。

うーむ、カメ子の捜査の鋭さ!尋問の凄味、恐るべし!                              


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父さんが倒れたから、それどころじゃないんだけどね、お前、どっから来た?

「なんやて! 父さんが倒れた! うん、うん、すぐ帰るよ。」

ある夜のことです。ムッシュTに緊急の電話がありました。ムッシュはすぐに準備をして、家を出ます。しかし、ムッシュの家は大阪です。福岡まで、遠い道のりです。

「そういうわけで、僕は今夜発つから、家の事は頼むよ。」

奥さんに言づけると、ハンドルを握り、夜の高速を走り続けました。まず実家に向かいます。

朝、明るくなって、ようやく関門海峡を渡り、北九州から古賀を抜け、そして福岡に帰ってきました。

「ただいま、・・・あれ、玄関に猫がいるぞ! お前はどこの子だ?じっとうずくまって、逃げないのかい!? ・・・あ、姉さん、ただいま、今帰ったよ! ・・うん、車だよ、で、どうなの、父さんの具合・・・・・」

一通り話を聞いて、ひと息つく暇もなくムッシュは病院に向かうため、また車に飛び乗ろうとすると、

「おや、猫ちゃん、まだ座っているんだね、フフ、ここで誰か待ってるのかい?」 

ムッシュは茶虎の痩せた猫に声をかけ、車を発進させます。とにかく父親の顔を見ないと、落ち着きません。病室のドアの前で一度立ち止まり,呼吸を整えて、コンコン

「失礼します、・・・父さん、ぼくだよ、・・・・ん?・・・寝てるのか・・・」

ベッドのそばに暫く腰かけ、じっと寝顔を見つめました。また少し、年をとったかもしれません。ドクターとの話しでは、手術をどうするか、気になります。病室に昼過ぎまでいて、帰りました。

「あれ、お前さん、まだいるの!? いったいどうしたの?」

午前中にいた猫が、なんとまだ同じところに伏せているのです。

「おかしいなあ、もしかしたら、具合でも悪いのかい?」

野良猫のようですから引っ掻かれないように用心しながら、ムッシュは動かない猫の体に触れてみます。けれども、あいかわらずじっとしたままです。

「あっ、お前さん、足にけがしてるじゃないか! こんなに大きな傷がある。そうか、やっぱり具合が悪かったんだね。どうしよう、病院に連れて行ってあげようか? 行くかい?」

咬まれないよう様子を窺いながらそおっと抱いてみましたが、少しも抵抗しません。ムッシュは段ボールに敷物を敷いて猫を入れると、そのまま病院に連れてきました。

「先生、そういうわけで連れて来たんですが、いったいこの猫はどんな猫か僕は全然知らないんです。でも、ほおっておけずにつれて来たんですよ、ちょっと見てもらえますか? 父親と話せたらもしかしたら知っている猫か、知らないか聞けたんですが、今は無理で・・・」

段ボールの中を覗くと、きれいな目をした茶虎がこっちを見返しました。野良猫のように怒ってはいませんが、おとなしいのはよほど具合が悪いからかもしれません。油断はできません。

とりあえず箱から抱え出して、足の具合を見ます。かかとの付近の皮膚がスパッと裂け、皮下組織や腱が露出しており、すでに化膿臭がします。血液検査としたところ炎症反応が高く、レントゲンで下腿骨の骨折が判明しました。

「うーん、やっぱり怪我して動けなくなってたのか・・・、先生、どうしたらいいですか?」

「ムッシュの希望はどうなのですか? 野良猫でしょ、応急処置して逃がすか、それとも家でじっと傷の癒えるまで面倒を見てあげるか、あるいは手術してあげるか・・・」

「うーん、助けてあげたいけど、今年は家族が次々倒れたり、介護が必要になったりが重なって、今度また父親が・・・うーん、でもやっぱり手術してください!」

こうして、大阪から帰ったばかりの朝、優しいムッシュの所に、たまたまその朝迷い込んだゆえに、幸運な茶虎君は、手厚い看護を受けることになったのです。

後日手術も無事終わり、あとは化膿した裂傷を含めて、骨折が順調に治ってくれるか、様子を見ることになります。

世の中には、優しい人がたくさんいますね。つくづく思いますが、幸せな国は、政府が造ってくれるんじゃない。陰で働いているそんな人たちに支えられて、世の中は住みやすくなったり、生きることを楽しく感じたり、できるんでしょうね。


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天気予報

六月に入ったばかりですが、九州の梅雨入りが発表されて数日たちます。

夜も十時近くになり、ようやく病院を片づけて勤務終了となりました。カメ子が窓越しに暗い外を見ながら言います。

「どうですかね、先生、外は雨は降っていますか?」

「うーん、どうだろう・・・、えーと、降ってないみたいだね。」

「フフフ・・・、天気予報を信じなくて良かった。今日は夜から大雨の恐れがあると言ってたけど、昼間、空が明るかったから、自転車で来たんです。どうせ天気予報なんて、当たるとはかぎりませんからね。」

「そうそう、男の甘い言葉と、天気予報は、信じちゃだめだよ! カメ子。」

すると、カメ子がぽそりと言った。

「・・・・・、信じてみたい。」


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