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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

畑の中の猫小屋

「チョッキは畑で飼ってんだよ。」

顔に刻まれた皺を笑顔でほころばせながら、マダムTはそう言われました。

「え? 畑・・・ですか?」

(いったいどうやって畑で飼うのかしら?)
マダムの言われている意味がのみ込めず、私は思わず聞き返しました。

チョッキはロシアンブルーに似た奇麗な雄猫です。福岡市の南のはずれ、背振りの麓で農業をしているマダムが可愛がっているのです。

もう山の桜もすっかり葉桜に変わる頃、胸に大きな傷をこさえて連れて来られました。

かなり大きな破れ口があり、猫同士のケンカだとしたら、そうとう化膿させた結果でしょう。

「畑に小屋を作ってやったのさ。柱を組んでブルーシートをかけて、その中にボール箱を置いてね。ホカホカ懐炉も入れてやってね、うん、毎日取り替えてやってるよ。」

「畑まで、毎日ですか?」

「うん、餌を持っていくからね。歩いて5分くらいだよ。」

たとえ5分とは言え、真冬の山道を毎日は大変でしょう。あの辺りは、市内よりはずっとたくさん雪が降るからです。

「いいや、大変な事はないよ、それぐらいは、ハハハ・・・。」

「それにしてもマダム、胸の傷はひどいし・・・重症ですよ! 肺炎を起こしたら大変だから、しっかり薬を飲ませてくださいね。」

私はそう言って、薬の袋を渡しながら念を押した。
何らかの事情が会って、自宅では飼えないのだろう。

山頂には自衛隊のレーダー基地も置かれている背振り山。
その麓の谷あいで、今日もマダムは姉さん被りをして鍬を振り、作物の手入れをしながら、傍に座っているチョッキに話しかけて暮らしているのだろうか・・・。

時々、遠くで近くで、ウグイスも鳴いているだろう・・・。
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