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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

姉の赤ちゃんを育てた日

「この子を世話していると、昔看護士をしていた頃の経験がちょっと役にたつわ、フフフ・・・」

リリーちゃん(仮名)を連れて、点滴治療に通われているマダムNがそう言われました。

「今はあまり動けないでしょ、だからお口に水を入れてやったり、少しづつ食べ物を口に入れてやったり、人と同じですね。」

「あら、マダムは看護士をなさってたんですか?それは存じませんでした。」

マダムが病院で働いていらしゃったとは初耳でした。

「はい、若い頃に、13年間ほど勤めました。あの頃は特に姉の子を世話したのを思い出します。」

「お姉さんの子・・・ですか?」

「フフフ・・・、ええ、そうなの。私の姉がね、出産した後で亡くなったんですよ。」

「え! お姉さんがお産で亡くなった、それで赤ちゃんだけ、無事だったんですか?」

「そうなのよ、それで誰かが赤ん坊の面倒をみなければならないでしょ。だけど、あちらのお姑さんがもう高齢だったのでね。

だから私が加勢に行ってミルクをあげて、ちょうど49日まで育てたんですよ。」

きっとマダムは、お姉さんの思いがけない訃報に驚いて飛んで行っただろう。そして悲しみに浸る暇も無くお腹を空かせて泣いている新生児を夢中で胸に抱いたのではないだろうか。

「泣かないで、ねえ、泣かないで。大丈夫だからね。」

そして何日かたった頃、溶かしたミルクを赤ん坊の口に含ませながら、語りかけただろう。

「どうして、あなたのお母さんはあなたを残してこんなに早く逝っちゃったんだろうねえ、まったく悪いお母さんだわね・・」

そう言いながらマダムの目から涙がこぼれ、しかし赤ん坊は笑っていたのかもしれない。

「ふーん、そんなことが思い出されたんですね。・・・それで、その時の赤ちゃんは今もお元気にされているんですか?」

「ええ、まあ、・・・今はもう四十いくつになったかしら?でも、姉が亡くなったわけだから、もう疎遠になっちゃったけどね。」

「・・・・なるほど。」

「そうねえ、なんだったか、たしか航空自衛隊で整備の仕事をしているとか、なんとか、聞きましたけどね・・・。」

マダムは窓の外を見ながらそう言われた。

さて、そんな話をお伺いしているうちに、リリーちゃんの点滴も終わりました。
さあ、リリーちゃんが、もう一度元気になれるようにみんなが、願っています。
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